旧じぇーしん日誌(~2013.10)

日本商品を中国に売り込んでます

中国に国酒を売り込め

 

先月14日、国家戦略相が日本酒や焼酎を「国酒」と位置づけ海外展開を後押しする方針を明らかにした、との報道を目にした(参照1)。

えー、今までそうじゃなかったの?と一瞬思ったりもしたが、いやいやこれは大事なことだと思い直した。日本の国家戦略として海外展開を応援すると宣言したたわけで、地域活性化や、原料となる米の需要拡大につなげる狙いがあるとのこと。ぜひとも一致団結して売り込んでほしい。

 

日本酒を取り巻く国内環境は厳しい。

東京商工リサーチの調べ(参照2)によると、日本酒の製造量は1968年の1,421千キロリットルをピークに減少を続け、2009年は469千キロリットルまで落ち込んだとされる。2010年度の日本酒メーカー523社の売上高は前年比3.8%減の3,161億700万円、うち372社(構成比71.1%)が減収だった。売上高の上位20位までの大手メーカーでも増収はわずか1社にとどまっている。ちなみに売上高のトップは白鶴酒造(340億4700万円)。2位は月桂冠(294億100万円)。3位は大関(225億7700万円)。

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そんな国内状況を背景に、企業は新たな販路を海外に見い出そうとしている。財務省の貿易統計によると、日本酒の輸出額は昨年度で前年比1.7%増の1万4013キロリットル、輸出額は3.2%増の87億7000万円と、ともに過去最高を更新したそうな。現状の輸出先トップはアメリカだが、韓国・台湾に続く香港・中国の存在感は今後ますます高くなっていくことだろう(参照3)。

 

で、ここから中国の話。

香港を除いた中国本土においても、日本酒は沿岸都市部を中心にかなり入ってきている。昨年3月の震災の影響で半年以上実質輸入がストップした時期があったとはいえ、11月の輸入解禁措置を経て、徐々に輸入量も増えてきている状況にある。では、ここ上海での日本酒の浸透具合はどうだろうか。現状をざっくり見てみると

・日本酒が売れるのはもっぱら上海市内の日本料理店。

・中国人も日本料理店では日本酒を飲む。逆に焼酎はあまり飲まない傾向。

・小売店舗に日本酒を置いても普段はあまり売れない。催事などでは比較的売れる。

・ギフト用として日本酒を好む中国人は一定数いる。

というところだろうか。

 

じゃぁ、日本酒をこれから売り出したいと考える業者にとってはどうか。もちろん人口比で見れば将来性が十分期待できるし攻めない手はないと思う。しかし中国ならでは、というかいろいろ難しい点も多い。一例でいうと、

・日本酒は貿易時にかかる税金が高い。

 →貿易費用や中間マージンをあわせれば日本の3~4倍程度の価格になることもザラ。

・とりあえず売り込みやすい日本料理店はパイが小さく量はそれほど出ない。

 →上海でも1000店舗くらいとか言われているが、そのパイを喰い合っているのが現状。

・現地パートナーとなる商社のプレイヤー数が少ない。信用できる業者が少ない。

 →上海で日本酒をまともに扱っている商社は片手で数えられるほど。

・中華料理店にはほぼ入り込めていない。

 →中華では白酒紹興酒、ワインが主流。

 他もろもろ商習慣の違いやらでトラブルになるケースもあるけどひとまず割愛。

 

酒に限った話ではないが、中国の市場の魅力は人口の多さに他ならず、在中国の日本人に売り込むだけではリスクを負って中国に売り込むだけの対価は得づらい(もちろん日本料理店は必ずおさえておくべき販路ではある)。こうした状況下で、「どうやって中国人に日本料理店以外の場所で日本酒を飲んでもらえるか」をあれこれ策を練っているのが今のところの各社現状と言えるだろう。それがレストランにせよ自宅にせよ。

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3月に行った催事。イベントでは日本酒はよく売れる

 

ここ最近、日本酒メーカーの方から相談を頂くことが非常に多い。日本市場の先行きが厳しい中、各社の抱える危機感の強さをひしひしと感じる。参照記事にもあるが、日本酒や焼酎の蔵元は中小企業が多いわけで、単独で海外に売り込むのはコスト面での負担が大きく、途中脱落するケースも少なくない。冒頭の「国酒」としての位置付けが、国や自治体の支援を受けるきっかけとなるのであれば、日本酒メーカーが参集して中国に大きく打ち出す手立ても作れるのかなと期待している。

 

日本酒を飲むという中国人の知り合いに質問してみた。

「日本酒好きなの?」

「好きだよ。日本料理店ではビールの後に頼むし、たまにおみやげでも買う」

「味の違いわかる?」

「正直全然わかんない。日本人が薦めてくれる有名なブランドを飲むだけ」

「高いでしょ?」

「高いほうがいいやつなんでしょ?」

「美味しいと思う?」

「まぁ、美味しい。でも他でわざわざ飲もうとまでは思わないね」

「誰かにあげるときはどうやって選ぶの?」

「有名なブランドか、見た目が日本的でオシャレかどうか」

「それが高くても?」

「高いほうがいいやつなんでしょ?」

彼は特にストレートな回答だったが、おおよそこれが現状の多数派なんだろうと思う。

まだまだ日本酒の中国進出は始まったばかりだということだ。

 

 

参照1) http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/business/20120415-OYT8T00421.htm

参照2) http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2012/1216330_2004.html

 参照3)http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120206/wec12020620070009-n1.htm