旧じぇーしん日誌(~2013.10)

日本商品を中国に売り込んでます

商習慣の違いと言うけれど

 

少し前になるが、中国連鎖経営協会というところが2011中国チェーンストア企業の売上ランキングを発表していた(参照1 / 中文)。以下一部抜粋

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1位は百貨店・スーパーを展開する百联集团。家電量販店の2強(蘇寧電器、国美電器)を抑えて首位に躍り出る結果となった。百联集团は国有系の流通グループとして全国的に店舗をもち、上海でも百貨店であれば八佰伴(ヤオハン)や東方商厦、第一百貨、友誼商城など、スーパーでは联華超市や世纪联華、コンビニでも快客など有名どころは同グループに属している。

 

さて、日本から輸入した食品を中国に売りこむ際によく言われるのが、「日本人と中国人のどちらをターゲットとしているか」ということだったりする。なんだかおかしなことを言っているようだ。もちろん、中国に輸出してるのだから当然期待するのは中国人に違いない。しかしながら、輸入品ゆえの価格高や認知度の弱さにより、大半の輸入食品はなかなか中国市場で受け入れられないのが現状なのである。食品なので賞味期限の問題もあるわけだし。そうした中で、日本企業からみれば勝手知ったる在中国の日本人を足がかり的な消費対象として、日系スーパーや日本食レストランにまずは売り込んでいる企業が多いのだ。

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とはいえ、消費旺盛な中国人にもガッチリPRしたいし、将来的には中国人を中心にたくさん買ってほしい。そうなるためには中国人が主要客であるような中国系(もしくは外資系大型チェーンの)店にも売っていきたいという要望はもちろん多い。ということで中国系小売店に入り込もうとすると、上海においては必然的に百联集团内のグループ店舗と相まみえるケースが結構多くなるわけだ。

 

一般的に、百联集团などの大手国有系企業は、中国的な“お役所感”が強い。そんな中国国有系小売店とのビジネスってどんなものか。弊社もボチボチ取引があるわけで、油断すると愚痴を書き連ねてしまいそうだが、端的にメリットとデメリット的なものををざっくり書いてみる。まずはデメリット、というか苦労するところは

 

1 とにかく門戸が狭い。入り込むまでが大変

2 上から見下してくる感が強い

3 取引条件が厳しいし折れてくれない

4 書類関連の申請がべらぼうに多い。さらに非効率

5 基本的には買取ではなく消化仕入れ。売れた分だけ支払い、売れ残りは返品

6 自発的な販売力(提案力)は強くない

7 入場料やその他初期費用が高い

8 なんだかんだ関係維持費用が必要

 

1中国ビジネスは周知の通り人脈がモノを言うので、一見さんではまず話を聞いてもらえない。2国をバックに仕事をしてきた人たちなので、基本的に初期対応は冷たい。だいたい一瞥されて終わる。3取引条件はまぁ厳しい。「規定だから変更できない」という一点張りなのも国有っぽさと言える。4書類関連の申請はほんと多い。多いのはしょうがないが、その大半が非効率的なものであるため、二度手間、三度手間になるケースが多くて辟易すること間違いない。5,6国有に限らず中国企業はたいてい同じ。言ってしまえば「棚貸しビジネス」でそこそこ売れてきたので、しっかり消費者に提案して売り込む力は正直弱い。7これも国有に限らないし、カルフールやウォルマートなどの外資メガスーパーも同じ。日本企業にとっては最も商習慣の違いを感じるところかもしれない。8は、まぁ中国ですからね。もちろん国有にかぎらずですよ。

 

じゃぁ逆にメリットはなんだろうか。

 

1 一度入れば、長期的な関係を作りやすい

2 いろいろ便宜をはかってもらえるようになる

3 立地の良い店が多いのでプロモーションに効果的

4 他店舗への横展開が比較的容易

5 少し箔がつく

 

上と比べるとなんか少ないような気が。。 1まさに中国的な仲間内ビジネスなんだろうけど、「内側」に入った途端急に親密になる。2なにかと面倒で時間のかかっていたものがショートカットできるようになる。また競合情報や政府関連情報なども逐次流してくれるようになる。3とにかく立地は良い。ここで集客できるかどうかは自社努力次第といえる。4国有系は店舗数が多く、一気に多店舗展開できるケースも多い。費用はかかるけど。5面倒かつ敷居が高い分、取引があれば外部からみて少し箔がつく。

 

と、あれこれ書いてみたものの、見返してみれば国有系にかぎらず大手民間も似たようなケースがけっこう多いので厳密に分けることはできないなと思い直した。どちらかというと中国系と日系の違いという見方のほうが近いか。まぁいいか。

 

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こう見てみると、日本企業は「やっぱり日本とは商習慣が違うもんだねぇ・・」と戸惑うかもしれない。中国系に入り込むのは難しそうだしトラブルが怖いな、と感じるかもしれない。しかしだ。上海近辺に関して言えば、ここ数年の輸入日本食品の売り込みの多くは「日本企業による日本人向け売り場」が主戦場であり、そこに固執してきた企業ほど結果を出せてこなかったように感じる。逆に、現地企業の中にまみれて数あるトラブルの末に「中国企業と共闘して中国人向け売り場」へ売り込みをかけた企業が、今ようやく芽を出しつつある。

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日本企業は中国を過剰に警戒している。

いや注意はもちろん必要だ。しかし昨今、日本のニュースに踊らされ、中国進出コンサルタントのネガティブ情報に煽られ、中国に過剰な偏見や悪意をもつ人が多いように感じるのだ。悪意を持つのは勝手だが、遅かれ早かれ、中国企業と組まずして中国での成功はありえない。当たり前の結論なのだが、実際問題、リスクを目の前にするとやっぱり「日系」「日本人」にすがりたくなるものなんだなと実感している。

 

「商習慣が違うから・・」とは対中国ビジネスで最もよく使われる逃げ文言の1つだろう。そう言われればもちろんそうなんだけども、しかしその一言で片付けるにはあまりに理解が足りない日本企業も少なくない。中国をとかく悪く言う日本人は中国国内でもたくさんいるが、偏見に満ちた外国人がその国を理解できるはずもないだろうなんて思ったりもする。愛とは理解の別名なり、とか言ったのはタゴールらしいが、いやはやその通りだと中国の地で気づき始めた今日この頃です。

「商習慣」という便利な一言でまとめるべからず

 

 参照1)http://www.ccfa.org.cn/viewArticle.do?method=viewArticle&id=ff808081366821a60137263aae380375&publishcid=402881e91c59dbcb011c59e030db0005