旧じぇーしん日誌(~2013.10)

日本商品を中国に売り込んでます

健康に殺到する日

 

都市部の中国人は、健康意識がずいぶん高まってるらしい。

 

なんてったって、デブが増えている。

人民網によると、2010年時点で中国の肥満人口が3億2500万人に達しており、成人4人のうち1人が肥満予備軍だという(参照1)肥満児童数にいたっては15年間で29倍に増えたというからスゴイ。確かに街を歩けば身なりの良いブヨブヨの肥満児が増えた気がする。背景には、もちろん経済発展による食生活の向上がベースとしてあり、さらに一人っ子政策による両親、祖父母からの愛情一極化が大きいんだろう。そうはいっても、今や中国は世界一の「糖尿病大国」とも言われるほど生活習慣病が深刻化しているらしいので(参照2)、豊かな社会生活を送る上で健康は避けては通れないテーマになってくるわけだ。反面、中国全体でいえば、内陸の農村部などはその日の食事もままならないほど貧困な地域もあるというのに、この急激な地域格差は本当に深刻だとしみじみ感じてしまうわけだが。

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では、都市部に住む中国人は健康についてどう感じているのだろうか。

日本リサーチセンターの2010年調査によると(参照3)、健康に気をつかっているか、という質問に対しては約7割が「気を使っている」と回答。さらに「健康を保つために何をしていますか」という質問には、「スポーツ」、「早寝早起き」などの回答が多かった。確かに早朝や夜に運動(太極拳やダンスなど)をしている中高年はよくみかける。ちなみに、同じ調査の中で、「今後1年間にあなたがお金をかけたいものは何ですか」という質問では、「食料品」がトップとなった。ふーむそうか。これまで所得が増えればまずは家や車を買い、あとはローンで生活カッツカツ、というのが都会派中国人の消費パターンだったが、徐々にソフト面への消費意欲の変化がなんとなく伺える。

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中国20都市消費者調査ミニレポートVol.1より

 

食品でいえば、健康食品やサプリメントなどは今後どうなるだろう。

矢野経済研究所の調査によると(参照4)、2010 年の中国健康食品市場規模は1000 億元(約1兆2500億円)で前年比111.1%、さらに2010 年から2015 年までの年平均成長率は17%程度と予測している。まだ法規制も包括的に定まっていなかったり、輸入品の手続きが煩雑など問題が多々残っているものの、今後も成長が期待できる市場と言えるだろう。先日BioFach Chinaというオーガニック食品の展示会に顔をだしてきたが、こうしたニッチ分野こそ、日本で手間暇かけたこだわりの食材や独自技術が受け入れられる貴重な市場とも考えられるのだ。

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f:id:kane201:20120615010540j:plain BioFach China

 

中国でも健康ビジネスが注目を集めつつある。

「中国の不思議な資本主義」(参照5)という本の中で、中国経済を「殺到する経済」と評する箇所がある。つまり、『「儲かる」と思われる業種にドッと大勢の人々、会社が押し寄せて、すぐにその商品が生産過剰に陥り、価格が暴落して、参入した企業が共倒れになる経済」(引用)のことを指すわけだが、これが非常に的確な表現だと思い印象に残っていた。最近でも、不動産投資や団購(グルーポン系サービス)、ネット通販などは、まさしく「殺到」と呼ぶににふさわしい現象だった。常に商売の種を探し、ここぞで一気に金をつぎ込む中国人の商感覚のあらわれの一つとも言えるだろう。

 

健康というキーワードは、個人の生存に直結する問題であり万人を対象としている。仮にこの市場が今後大きなビジネスチャンスとしてガッツリ目をむけられたときは、おそらく同様の「殺到」が起こるのではないかとぼんやり想像している。真偽不明な情報が飛び交い、粗悪品が市場を覆い尽くんじゃなかろうか・・と心配する面もある。実際、そうした兆候はすでに各地で発生している。もちろん、市場健全化に向けた必要過程と言えなくもないのだが、それでも傷跡の大きさは他の業界を見れば一目瞭然だろう。商売の鉄則としてよく語られる、「消費を促すには危機感を煽るのが一番」みたいなテクニックは、こと健康においては抜群の有効性を帯びてしまうのも一層恐ろしいと感じてしまうのだ。

 

結局、何事もゆっくり着実が一番健全ですよねという話。

経済も健康も一日にしてならず、を肝に銘じておいたほうが良さそうです

 

 

参照1)http://j.people.com.cn/94475/7718011.html

参照2)http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2010/000249.php

参照3)http://www.nrc.co.jp/report/pdf/100316.pdf

参照4)http://www.yano.co.jp/press/pdf/856.pdf

参照5)東一眞著、中公新書クラレ(2007)