旧じぇーしん日誌(~2013.10)

日本商品を中国に売り込んでます

タダより高いものはやっぱりない

 

先日、知り合いの中国人社長とお酒を飲んでいる中で、とある日本人のイケてない仕事っぷりが話題に上がった。

 

「あいつは毎回お願いごとばっかりで全然ウチにメリットがない。共通の知り合いもいたからはじめは義理で付き合ったけどさ。今後はもう助ける気はないね」

 

酒が入っていたこともあり、その社長の口調もわりと辛辣だったが、まぁどこの世界でも聞かれる類の話だろう。その時はそれ以上話は深まらなかったが、改めて思いかえすと特に中国ビジネスの肝だよなと感じるようになった。中国に限らず、人と人とのつながりで仕事を作る世界にいる以上、貸し借りの意識が低いと信用されない。言葉にすれば当たり前の話だが、遅ればせながら中国で仕事をしながら改めてこの言葉の重みを感じるようになったわけだ。いやぁ深い。

 

当社の例を挙げれば、取引先に上海の某高級小売店がある。彼らとの付き合いの中で、よくちょっとした『お願いごと』をされる。「○○まで旅行に行くんだけど」「日本でいま人気の○○は手に入るの?」こういうとき、みんな大抵要求までは言わない。濁した言葉の語尾をこちらが汲み取り、出来る範囲で『お願いごと』を聞き入れるのだ。金額にしたら1回あたり数万円とたいしたことはない。しかし、こうした彼らのわがままを聞き入れるべきなのか?日本人の感覚とすれば最初は当然とまどった。

 

「いやいや、それって立場を利用したリベートじゃんか」と私。

「でも、これをしてあげたら関係は良くなりますよ」とスタッフ(平然)。

 

で、実際に要求に答える。そうすると本当に関係性は良くなるのだ。取引は安定し、オペレーションもスムーズになり、発注量も増える。当初は「中国人は変なところで律儀だな・・」なんて不思議に思っていたが、こうした“貸し借り”の意識が、彼らの商習慣を支えるある種の美意識となっていることを次第に理解できるようになった。

 

f:id:kane201:20130310172017j:plain お返しは相応に!

 

言わずもがな、中国は会社の名前よりも個人間の人間関係で仕事が動く。つまりは、個々人の「貸し借りバランス」で仕事が作られ商売が動くようになっている。「この前は無理なお願いしちゃったから、あの人を紹介して仕事をつないであげよう」とか、「あの時流した仕事は大きくなったみたいだな。じゃぁ1コ面倒な仕事を頼んでもいいだろう」とか。長い目で見ればトータルで貸し借りバランスがとれる限り、中国では良好な関係を続けることができる。逆にバランスが維持できなければ関係は崩壊する。冒頭の日本人も、この貸し借りバランスがわかってない(もしくは保てない)人だったということだ。

 

ちなみに、中国でやたら“交渉力”をひけらかして毎回優位な条件ばかり獲ろうとする輩も日本人には結構多い。相手を打ち負かしてその場だけ利益とっても、次回につながらければトータルマイナスだよねという、これまた当たり前の話にすぎないのだが。そういう人は徐々に地盤が沈下していくので、そっと距離をとっといたほうがいいだろう。

 

当社も上海に会社をかまえて早や数年。業績は低空飛行のままながら、業界内ではそれなりに仕事をさせてもらっている。本音をいえば、「手間暇をかけている割に儲けが伴わないね」という思いも内部ではあるにはあるが、それでも長い目でみればあらゆる場面で“貸し”を作っているという少々の自負もある。2013年は刈り取りの時期だ。

 

f:id:kane201:20130310172531j:plain 世の中ギブアンドテイクだろ?

 

ということで、中国で分不相応なほどの待遇を受けたり、高価なモノをもらったり、豪勢な食事をご馳走してもらってヘラヘラ喜んでるのは無知か無能だ。はじめに借りを作るか貸しを作るかは結構重要なポイントだ。中国人の商売人ほど、この感覚が長けている。彼らと付き合うならば貸し借り天秤はしっかり計量しないといけません。

 

タダより高いものはやっぱりないのだ。

 

 

 

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