旧じぇーしん日誌(~2013.10)

日本商品を中国に売り込んでます

成長続ける台湾系スーパー「RTマート」の強み(メルマガ転載)

 

※今回は、メルマガ『江口、金子、富井の「心理学とロジックで考える中国ビジネス』の2013年1月22日発行号で掲載された私のコラムを、許可を得て一部加筆・修正し掲載します。

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今回のテーマはRTマート(大润发)という台湾系スーパーについてです。

中国チェーンストア経営協会が発表した「2011年外資系チェーンストアランキング」において、カルフール(家乐福)やウォルマート(沃尔玛)を抑えて中国国内の売上総額トップを誇る店舗です。なぜ同社が中国人消費者から強い支持を受けているのでしょうか?小売のエキスパートである富井さんからは本メルマガ内で専門的な分析をして頂いていますので、私からはその前段として、イチ消費者的な視点、また出入り業者的な視点からRTマートの成長の秘密を考えてみたいと思います。

 

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中国チェーンストア経営協会HP(http://www.ccfa.org.cn/)より一部抜粋

 

上海市中心部に住む人達にとって、もっとも馴染みのある外資系大型スーパーといえばカルフールです。同社が「都市部出店」で攻勢をかけている一方、RTマートは「郊外出店」を戦略としているため、都市部に住む私達のような外国人にはどちらかというと馴染みが薄い存在です。

 

ちなみに私がRTマートに初めて訪問した際の第一印象は、「店内が明るいな」でした。地元のスーパーや現地化に根ざしたカルフール等は、私の目からみると店内がどこか薄暗く、商品が煩雑にぎっしり置いてあるイメージです。一方で、RTマートは店内を明るくし、全体的に管理が行き届いている印象を受けました。例を挙げれば、「商品が整然と陳列されている(つめこみ型の陳列ではない)」、「POPに統一感があり見やすい」、「魚が泳ぐ水槽の水がキレイ」、「水槽内で死んでいる魚が少ない」、「肉や魚の生臭さが店内に充満していない(店内が無臭に近い)」、「生野菜の鮮度を落とさないよう常時霧ミストがけしている」・・・など、ある種日本では当たり前に行われている配慮もこちらの現地スーパーでは対応できていないことが多い中、RTマートはその点をしっかり取り入れている印象でした。

 

余談ですが、私は職業柄、小売店に入ると必ず輸入食品を探してしまうのですが、RTマートの店内に輸入食品はほぼ見かけませんでした(店舗によって一部異なると思いますが)。低価格をウリにする同社では高価格になりがちな輸入品はそぐわないという判断でしょう。将来的にはわかりませんが、当面RTマートは日本からの輸出商品の販路としてターゲットにはならないと考えたほうがよいでしょう。

 

f:id:kane201:20130329151415j:plain 大润发の外観

 

ちなみに、出入り業者的な視点でみると、意外にも食品売場内で販促員がそれほど多くなかったことに少し驚きました。というのも、時間帯にもよるでしょうが、カルフールなどはピーク時にはメーカー派遣の販促スタッフであふれます。小売店の立場が圧倒的に強い中国において、小売店側が出す取引条件の厳しさはしばしば問題になりますが、売り場への販促スタッフの提供もその条件の一つと言われています。もちろん、販促スタッフが自社商品をPRすれば売上増につながります。しかし、各社からのスタッフがあまりに多いと、スタッフ同士が雑談に興じてしまい販売に身が入らなくなるという声も聞かれます。RTマートの取引条件等の詳細はわかりませんが、カルフールよりは比較的緩やかといわれており、業者との良好かつ長期的な関係が伺えます。

 

店内全体を通した私の印象としては、「カルフールよりソツがなく安心できる店」というのが率直な感想です。逆に言えば「これはスゴイ!」と思えるほどの強力なサービスや品揃えがあるようにも感じませんでした。しかしそれは日本人的視点で見ているだけにすぎません。実際の所、中国で成功している台湾企業のほとんどは、「中国でまだ取り入れられていないものを、中国で違和感なくカスタマイズする」ことが非常に巧みという点が特徴です。日本企業が試みがちな自国での成功事例の踏襲やドラスティックな変化ではなく、『普段の生活を少し豊かにする範囲で新しい価値を提供する』、という台湾式のテクニックは、中国攻略の上で日本企業も大いに学ぶ必要があるのかもしれません。

 

 

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