旧じぇーしん日誌(~2013.10)

日本商品を中国に売り込んでます

ある中国人女性の転職グチ話

 

中国人の友人が、現在転職活動をしているらしい。

 

彼女はいま、上海にある某日系企業の財務部門で働いている。専門資格も有している。日本語はカタコトながら、基本的なコミュニケーションは問題ないレベル。そんなわけで今もそれなりの給料はもらっているのだが、上昇志向の強い彼女は、「日本人でないと出世ができない」企業体質に不満を抱き、現在空き時間を使って転職先を探しているんだそうだ。まぁ日本企業にはありがちな話だろう。

 f:id:kane201:20121110161853j:plain中国の転職はステップアップ

 

もともと彼女は大の日本びいきで、10年前位に日本のドラマの面白さに目覚め、そこから日本語を独学で勉強しだしたという。また日本の文化の高さや成熟した社会性にも強い敬意を抱いており、先の尖閣デモの際も中国の文化レベルの低さをさんざん嘆いていたほどだ。

 

という彼女なので、次の転職先についても、「条件さえよければ日系企業がベスト」との希望をもっていた。しかし、すこし時間が立って状況を聞いてみたところ、「最近は欧米系企業にシフトしてきている」と言っていた。理由を尋ねると、案の定、給与面の問題だという。

 

「日系企業の求人は元々条件が悪かったんですけど、それでも私は日本が好きなので、ある程度は平気と思ってたんです。でも、最近はとくにヒドくて・・・」と彼女は語る。ヒドイとはどういうことか?彼女曰く、「求める技能は高いのに、他と比べて給料が明らかに安い」んだという。「この前なんて、日本語上級、専門業務経験3年以上、資格必要の求人が月給5000元~(約65,000円)っていうのもありました。正直、馬鹿にしてるのかと思いました」と語気を荒げていた。そうか・・・まぁ確かに上海では、もう5000元で有能な人材が取れる市場ではなくなってしまっている。この点で、日本企業がどれほど相場観をもっているのかは疑問を持たれてもしょうがないのかもしれない。

 

彼女の止まらない愚痴を聞き流しながらも、しかし彼女なりの企業傾向分析は興味深く聞いていた。彼女自身も中国企業1社、日本企業2社という経歴なのでどれほど大局的に見れているかは不明だが、一人の中国人ビジネスパーソンの意見として耳を傾ける価値があるように思う。以下は彼女の意見を要約したもの(筆者作成)。

・会社別メリット/デメリット

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※内容は彼女独断の意見です、念のため。

 

色々言葉足らずの面がありそうだが、ひとまずこんな内容だった。

彼女にとってすれば、今回の転職活動を経て「日系企業のデメリットが1コ乗っかった」という認識でいる。そのため、彼女ほど日本が好きで意欲の高い人であっても、さすがに欧米系や中国系を考えざるをえなくなったというのが実情らしい。

 

自分は人材業界についてなんの知見もないが、今回たまたま一人の中国人を通し、「上海の転職市場における日系企業の立ち位置」について考えさせられる契機となった。もちろん、彼女の意見が正しいかどうかは不明であり、求人条件の変化についても実は以前から変わっていなかったのかもしれない。あくまで彼女個人の主観だ。しかしながら、最期に彼女が投げかけてきた疑問はなかなか日本人の我らに考えさせられる問題だったりする。

 

「日本のことが好きで日系企業で働きたいと思っても、たぶん優秀な人になればなるほど、今の状況では残念ながら日本企業は選べません。この状況を日本の経営者の人達はどう思ってるんですかね?」

 

いま日本の企業はどこも経営が苦しく、また中国事業は再編を余儀なくされるところが多い。といってもそんなことはもちろん言い訳にできるわけもなく、企業がグローバル化に打って出れば人材確保もグローバル化にならざるをえないわけで。そうなると、人材獲得競争もますます激しくなるんだぁ、としみじみ感じたのでした。

 

中華料理に焼酎を添えて

 

以前も少し紹介したが、いま上海の中華料理店で日本の焼酎を販売している。

【参照】 焼酎はいかがですか(2012.7.11)http://urx.nu/2nJi

 

今回の企画は、宮崎県庁主導のもと、「宮崎産焼酎の海外販路開拓」の一環として中国本土=上海へのテスト販売としてスタートしている。そこに当社が貿易、販売部分をサポートして約4ヶ月間の販売プロモーションを実施することになったのだ。尖閣デモの影響ですったもんたがあったわけだが、なんとか無事販売にこぎつけた。

 

で、その販売している店というのがここ、小橋流水

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同店は上海市内に7店舗を現在展開中だが、今回はそのうちの4店舗(淮海店、浦東店、川沙店、南汇店)にて焼酎を販売する。いわゆる伝統的な上海料理をベースに、洋食・和食テイストを取り入れている点が特徴だ。海外の食品なども積極的に試してみる同社の姿勢が本企画にもうってつけとなり、今回コラボを提案した。特に、写真上の川沙店は老上海の雰囲気そのままのオシャレなレストランで、日本人観光客や接待には特にオススメだ。市内中心部からは遠いが、近くに立ち寄った際はぜひ足を運んでみて欲しい。

 

今回輸入した焼酎は、宮崎県企業6蔵元の商品全12アイテム。各店舗には焼酎を無料試飲できるサービスもあるほか、メニューには焼酎の飲み方指南なども中国語で添えている。水割りは中国で安っぽいイメージがあると思われたので、基本的には「ストレート、ロック、お湯割り、ジュース割、ソーダ割り」の5種類をベースに提案をしている。

f:id:kane201:20121103184703j:plain 焼酎にお猪口・・はご愛嬌

f:id:kane201:20121103184651j:plain 店内には観光ポスターも

 

中国は日本酒が人気を高めているのに対し、「焼酎が飲まれていない」という点は以前のエントリーでも触れた。とはいえ日本人にはもちろん人気が高い。正直、今回輸入した焼酎も、日本料理店に営業をかければそれなりに売れるものばかりだ。しかし宮崎県の意向としては、「将来的にみて、焼酎を一般的な中国人に定着させたい」という目的のもとに販路を中華料理店に限定している。これ、県の事業としてはなかなかにチャレンジングだ。企画立案者の方は相当内部調整をしたことだろう。しかし地域産業支援はかくあるべし。こういう事業にこそ当社も全面サポートしていきたいのだ。

 

実際のところ、上海の中華料理店も、厳しい競争の中で日々変化を求められている

王道の中華料理だけで勝負するのではなく、新しい要素を取り入れてそれぞれが差別化を図ろうとしている。店内の奇抜さや、海外から仕入れた新しい食材、盛り付けの斬新さ、度を超えたサービスなど手法はさまざま。その中で、日本式の刺身を提供する中華料理店もでてきているほどだ。今回の焼酎テスト販売も、そうした新しい切り口の一手として料理店側も期待を寄せてくれている。もちろん新しい酒市場を作っていくことの道のりは非常に非常に険しいわけだが、徐々にでも焼酎を嗜む中国人層を作っていければ、少量ながらも継続的な販売につながるだろう。また今後は、日本料理店や市内小売店、各種イベントなどとも上手くリンクさせていきながら販売量を増やしていければいいんじゃなかろうか。

 

f:id:kane201:20121104190804j:plain 中国ウン千年の酒の歴史に挑む・・のか

 

焼酎に限らずだが、『ド新規の海外市場に新しいカテゴリの商品を提案する』 というのは非常に地道な作業だ。大手企業のように広告費をドカンと投入すれば話は別かもしれないが、こうした草の根的な手法で売り込んでいく場合は、ある程度長期的に繰り返し提案するほかない。たまに、「日本では○○の方法でこの商品を普及させました!中国でもこの路線でいきます!」と日本の成功体験をそのまま持ち込んでくる人もいるが、大抵うまくいかない。日本と中国の商習慣の違いはやはり直接体感しないとわからない。失敗を重ね、マイナーチェンジを繰り返しながら最適な手法をみつけて小さな成功を積み重ねていくしかないのだ。

 

というわけで中国人のみなさーん、食事のお供にぜひ焼酎をお試しあれ。

 

中国人に快適な睡眠を

 

社会実情データ図録に、睡眠時間のアジア太平洋諸国比較がでていた。

 

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(参照)http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2329a.html (中国の数値は2008年調査)

中国人は他の国と比較してよく寝てるねって話。ふむ、そんな気もする。

 

長く眠るってことは、「早く寝る」か「遅く起きる」かのどちらしかないわけで、その点でみれば中国人は前者の傾向が強い。そもそも、人が早く寝る理由ってなんだろうか?なんとなく思いつくままに挙げてみると、

1.朝が早いから(その日の朝が早い/次の日が早い)

2.疲れてるから

3.体調が悪いから

4.夜の時間にゆとりがあるから

5.ストレスがないから(というかストレスがあると眠れない)

こんなもんだろうか。

これを順番に中国人の生活と照らしあわせてみると、イメージとしては1.4.5あたりが当てはまるんじゃないかと思う。

 

1.朝が早いから(その日の朝が早い/次の日が早い)

前述の通り中国人は朝型率が高い。太極拳のイメージが強い中国だけど、なにはなくても早く起きる人は確かに多い気がする。早朝の公園でバトミントンをする人の多さたるや中国に来たばかりの頃は驚いた。スーパーは朝7時に開店しているところもあるし、それに前もって列をなす老人達もけっこういるほどだ。

f:id:kane201:20121031112344j:plain 朝の体操

 

4.夜の時間にゆとりがあるから

ポイントは「残業がなくて」「夕食の時間が早い」ってこと。中国人は、一部のモーレツ層以外は基本的に定時で退社する。さらに夕食の時間が早い。レストランでは17時くらいから結構客が入り、18時前後には満席とかって珍しくない。しかもあまり長居しないのが中国人の特徴で、1時間くらいでサラッと食べてさっさと帰る(飲みの席や接待時は除く)。とすると、19時くらいには家に帰ってまったりテレビをみたりお茶をのんだりするので、夜の自由時間が長く、自然と早く眠りにつく。とはいえネット世代の若者達は、日本と同じように夜な夜なゲームやSNSで遊んでるわけだけど。

 

5.ストレスがないから

ストレスをためこむと良い睡眠を得られない、らしい。ストレスが多い日本人は、会社から帰ってもすぐに眠ることなく、晩酌を嗜んで深夜番組をみてネットをみてから寝床に入る。でも明日のこと考えるとなかなか眠れない・・みたいな悪循環で健康を害することも少なくない。逆にそこまで仕事に過剰な負荷がかかってない多くの中国人にとっては、安眠が妨害されるほどの心労はまだそこまでないのかもしれない。

 

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などと書いてみたが、冒頭の統計データも中国は2008年のもの。このドッグイヤーばりの経済浮沈を突き進む中国で、4年前なんてもう一昔前だ。いまや中国も夜型人間が年々増加し、労働時間とともにストレス蔓延社会に変貌している。これまでのような十分な睡眠をとれていない「寝不足中国人」も増えているに違いない。

 

今年5月の新華社の報道では、中国人会社員の1日の平均睡眠時間は7.33時間、平均労働時間は8.66時間、往復の平均通勤時間は0.96時間と紹介。また彼らが普段かかえるストレスとして、「仕事内容」「人間関係」「担当業務の曖昧さ」「スキルアップ」「時間配分」などが挙げられている。また人民網では、英企業の調査結果を紹介し、世界80カ国・地域の会社員1万6千人のうち、昨年よりストレスが増したと答えた人の割合の一位(75%)が中国本土だったと報じている。とくに上位2都市が上海と北京だったというのがいかにも象徴的だ。

(参照)http://j.people.com.cn/94475/7995043.html

 f:id:kane201:20121031113736j:plainストレスは中国語で精神圧力・・わかりやすい

 

人民網の記事の続きはなんともエグい。

・大型連休で旅行者が殺到し大混雑するのはストレスからくる「逃避願望」のせい

・ブランド物やアクセサリーを衝動買いするのはストレスのせい

・インターネットゲームに没頭しすぎたのはストレスのせい

・飛行機内で前に並んでいた乗客と喧嘩して乱闘になったのはストレスのせい

・地下鉄内で席の取り合いから殴り合いに発展したのはストレスのせい

尖閣問題に便乗して反日デモに参加し店を破壊したのはストレスのせい(飛躍)

 

ス、ストレスって怖い。なんでも原因になってしまうのか。

日本人も中国人も、まずは毎日グッスリ眠るとこから始めましょうかね

 

ハッタリから詐欺師ができるまで

 

普段海外に住んでいると、ふと、日本特有の “ 変わった点 ” に気づいたりします。

 

先日の東京出張で改めて思ったのが、日本のテレビ番組の 「全部おんなじ感」 。

旬のニュースが飛び込んでくると、民放はどこもかしこも同じ切り口で同じ放送をひたすらダラダラと放送してますよね。中国人留学生が、「日本のテレビはチャンネル数は少ないのに、全部同じものを放送してますネ!」と不思議がっていたのがよくわかります。民放なんて4つか5つくらいでしょう、それが全部同じ時間に同じ内容を放送しているのをみると、一種の恐怖感すら覚えます。あ、今回の主題はこっちじゃないのでこのへんにします。

 

で、今回の出張中、テレビでもう最高のネタ素材として重点放送されていたのが、iPS細胞の臨床応用で話題を振りまく 森口尚史氏の1件。日本の全国民が、彼の苦しい言い訳の一挙手一投足にツッコミを入れ続けていますね。たしかに、見ているだけでおもしろい。次はなにをぶち込むんだとワクワクしてしまう気持ちはわかりますけど。

f:id:kane201:20121021165755j:plain みんなで糾弾(参照1)

 

こういう ウソがウソを呼んで身動き取れなくなっちゃう人 っているよなぁ、と思っていたら、ネットでも今ちょっとした糾弾を受けている人がいました。

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読売新聞の記事を盗用したかどうかの話で多方面よりツッコミを受けているジャーナリストの上杉隆氏。池田信夫氏の精緻な検証・追求(参照2)やその後の上杉氏の弁解がまた騒動を大きくしているようですね。事実関係をそこまで確認してるわけではありませんが、おおよその流れをみるにつけ、「あぁこの人もか・・」という感じがしてなりません。引き続き動向が気になりますね。

 

さて、上海にいる自分も、似たような事件に遭遇したことがいくつかあります。

 

つい先日は、知り合いが働く語学スクールの日本人社長が、経営が苦しくなり給料日直前に音信不通になりました。前日までの景気のいい話はどこへやら。関係者が怒って日本人社長の家に突入しても、のらりくらりと言い訳を続ける彼の弁明に皆が途方にくれ、今は日本にいる彼の親族などに金銭手配を図っているようです。当の本人はイマイチ責任の重さを実感しておらず、夜は相変わらずキャバクラに行ったりと普段通りの生活をしているようです。なんでしょうねこの緊張感のなさは。

 

また、関係ない会社の事業計画を別の会社に壮大に語り、中国事業スタートの頭金だけもらって綺麗にトンズラをかました日本人詐欺師もいました。その人はA社にB社の事業計画を語り、B社にA社の事業計画を語り、両者から総取りという古典的な手法で見事に大金をせしめたようです。スゴイですね、よほどの話術だったのでしょうね。そんな彼は今も上海のどこかでで堂々と夜の街を闊歩しているというから大物です、ぜひ一度教えを請いたいとすら思います。

 

そんなことをいいつつ、当社も偉そうなことは言えません。かつて当社に在籍していた日本人は、要職にも関わらず社内案件や諸問題を自分だけで溜め込み、周囲から追求をうけると急に連絡が途絶えて、いつの間にかまったく同じ会社を上海に作っているということがありました。その後の退職手続き等も一切ナシ。途中案件も多々あった中で、その後1~2ヶ月くらいはクライアントへのお詫び行脚を続けたことがあります。まったくお恥ずかしい話です。

 

こうした 「ウソで身を固める人達」 の共通点を考えてみると、

・ ウソをつくことの気遅れ感が長い年月を経て麻痺してしまっている

・ 自分の できること と できないこと が本気でわかってない

・ 見通しが異常に甘い

・ 事態が悪化してからの責任を他者に転換するのが得意

・ 良くも悪くも切り替えが早い

・ 周辺の人が一番不幸になる

というような傾向が挙げられます。私なんかも誤解してましたが、いわゆる “詐欺師” と言われるような人たちの多くは、はじめから人を騙す気はないんですね。単純な善意、というか過剰なポジティブ思想が根っこにあるように感じます。その後、上手くいかなくなったときに他者に責任をごく自然に押し付け、「この経験をもとに次のことにチャレンジしよう!」とお花畑的なポジティブシンキングが再び発動します。もちろん周囲の人はその度に離れていきますが、また新たな人を呼び込む程度の話術を持ち合わせている、ということも彼らの特徴ですね。そうしたアップダウンな道のりを練り歩いていく中で、いつしか周囲から「アイツは詐欺師だ」という称号を自然と得られるんだろうなと感じるわけです。

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もちろん、ベンチャーなり海外ビジネスなりの現場において、 ”成り上がったるぞ!” という気概と同じくらい、相応の「ハッタリ力」は必須条件だと感じています。過去の名経営者の成功譚なんかを読んでも、「勢い任せの経営の果てに、ある時身の丈に合わない案件・トラブルに遭遇し、なんだかんだで奇跡的に乗り越え・・・」みたいなドラマティックなシーンは特に心が動かされますよね。しかし、そうした場面に当事者たる自分を重ねるのはやっぱり危険です。上記の成功者の多くは、 「普段から目の前の仕事と真摯に向き合ってきた人」 であって 「積み重ねてきた “徳” が偶然あるとき幸運を呼び込んだ」 ケースだったりすることがわかるからです。そんな奇跡はなかなか起きません、当然ですよね。

 

ここ中国でも、ウソが多い人の行く末は、自分のウソに縛られて身動きがとれなくなって姿を消してしまう(もしくは消されてしまう)のが大半です。

 

こういうグレーな人達をどう見極めていくべきか。どうなんでしょうねぇ、人を見る目って本当に難しいです。個人的には、人生が破綻しかけるほどの窮地を何度も経験している人でないと、「本当の真贋を見極める目」は持ち得ないと思っています。かくいう自分も、もちろんそんな眼力を持っているとも思っていません。むしろ、実はとっくに詐欺師の烙印を押されているかもしれませんけどね。

 

参照1)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121020-00000554-san-soci

参照2)http://blogos.com/article/48226/

 

チャイナパッシングは止まらない

 

1週間ほど、東京に出張してきました。

 

主な目的は、来年春節のイベント案内やら、個別クライアントへの提案など。

あとはこんなことも。

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写真は大手町の某金融機関での社内セミナーの図。めずらしくお呼ばれしたので、中国における日本食品の現状等について話をしてきた。「このご時世に中国の話なんて・・・」という気もしなくはなかったが、すこしでも現地のリアルな情報を伝えれればと思い、1時間ほど好き勝手喋ってしまった。関係者の方々ありがとうございました。

 

また今回の出張で、もう1つ日本で確認しておきたいことがあった。それは、反日デモ後の日本の対中感情。言葉には出さない「なんとなくの空気感」が強い影響力を与える日本で、中国にいては感じられない、日本の対中空気感を実感しておきたかった。

 

で、結論からいえば、大勢としては「中国リスクは今後も避けがたい。今ほど経済協力関係が密接している中でドラスティックな変化は難しいが、徐々に第三国へとシフトしていかざるをえない」という流れでもう間違いないだろうと確信している。皆、口には出さないものの「もう中国には我慢ならん!」という激しい憤りを感じている。今後、中国を通過(パッシング)してASEANを主戦場と考える日本企業は今後さらに増えていくだろう

 

日本企業の多くは海外に対して臆病だ。

そのためか、海外進出にあたって対象国の「親日度」をよく気にする。今回の中国のデモの1件をみてもその傾向に拍車がかかるだろう。中国の社会環境を考えれば、反日思想の根っこはまだ数十年は続く。 反面、ASEAN諸国の「親日度合」は真逆にも近いという。という状況の中、日本企業もようやく「もう中国さんには頼らない!あ、ASEANのほうに行くもんねっ」という弱々しい声が徐々にあがってきている、というのが現状と言えそうだ。

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週刊現代の2012/10/27日号。電車の中吊りにデカデカと出てて思わずのけぞった。週刊誌特有の煽りもあるとはいえ、これが日本の内なる声かと思うとなんかゲンナリ。

 

そんなわけで、今後、日本の対中ビジネスは確実に縮小傾向へ向かう

 

これは中国の国内環境が大きく変わらない限り、たぶん間違いないだろうと思う。しかしながら、個人的には 「それでいいじゃないか」 と思っている。上の文言はあくまでマクロの話で、個別業界的には差異が激しい。製造業は確実に中国離れするだろうが、サービス業はまだまだこれからの市場だ。食品業界なんて、普遍的な13億人の胃袋を相手にするわけだから市場が縮小するわけがない。また当社みたいな最下層を生き伸びる零細企業からみれば、カントリーリスクと自社リスクはまるで結びつかないし、逆に作用することだって多い。 経済指標に一喜一憂するのは大手にまかせて、 弱小企業の我らは、ニッチな市場にこそビジネスチャンスを作っていけばいいのだ。ニュースに踊らされる企業は尻尾を巻いてとっとと日本に帰ればいい。
 

図体が大きくなりすぎた中国は、今後、市場規模とは裏腹に、日本企業にとっては「アジアのニッチ市場」になっていくのかもしれない。それでいいじゃないか。僕らは引き続き、この中国という “メガニッチ”な市場で戦っていくと決めている。

 

上海で日本物産展

 

あ、今回は宣伝です。あらかじめ。

 

過去エントリでもちょいちょいワードを出していますが、当社の得意先の一つに、ヤオハンという大きな百貨店があります。中国名ですと八佰伴(バーバイバン)と言います。2011年の百貨店売上ランキングで上海トップを誇る、言わずもがなの大きなお店です。日本人はヤオハンと聞くと、「あのヤオハン?」とつい思われるかもしれませんが、えぇそのヤオハンです。経営破綻後、中国の国有企業である百联集団が事業を引き継ぎ今に至っているんですね。

 

f:id:kane201:20121010201253j:plain 浦東地区にそびえるヤオハン

 

さてそのヤオハンで、春節前にイベントをやるという宣伝です。

地下1Fに食品売場があるんですが、今回はそこではなく、2Fの催事場(約300平米)で日本物産展を計画しています。日本からの輸入食品や雑貨、アパレルなど日本製品をたくさん集める販売会ですね。2013年の春節は2月9日から15日までらしいのですが、その直前期(1/25~2/3)という、一年でもっとも消費が活発化する時期にイベントをさせてもらえることになったわけです。「この日中関係の冷えきった中で開催するのはどうなんだ!?」というツッコミを真正面から迎え撃つわけですが、この向かい風全開の中でも乗り込んでこられる気骨ある企業がいるならば、それはもうぜひ一緒にやろうよ!という強い意志のもと強行することと相成りました。関係者の皆さまがんばっていきましょう。

 

ということで、現在参加企業を募集しています。ご興味ある企業担当者の方はご連絡ください。自社で輸出するもOK、輸出入含めて丸ごと委託したいという方もOKです。イベント後の継続販売や他店舗営業もセットです。詳細はここには書きませんが、お気軽にご相談いただければなんでもお答えするので、暇つぶしがてらご連絡いただければ幸いです。ご連絡は当社HPリンクか問い合わせフォームまで。

 

以上宣伝でした。

 

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余談ですけど、中国のサービス業もいま曲がり角に来ているようです。

あ、ヤオハンがというわけではありませんよ、一般的な話です。過去にも書いたことがありますが、中国もこれまでのように「モノを置いておけば売れる時代」が終わりつつあります。販売側も売るための創意工夫が厳しく求められてきているフェーズに突入したということですね。日本もかつて通ってきた道です。

f:id:kane201:20121010205509j:plain 試食プロモーションとか

 

食品に関連する業界で言うと、まず最初に飲食業界から変わってきたように思います。店内の華やかさや料理の豪華さだけでなく、社員へのサービス教育も強化されてきており、中級レベルのレストランでも “おもてなし” という概念が浸透しつつあるように感じます。ホテルのサービス文化が上流から浸透してきたのかもしれません。

 

そうしたサービス意識向上の流れが小売系にも及んでいます。最近特に顕著なのはコンビニ業界。ご存知のとおり中国でも日系コンビニ合戦が本格化しつつあり、上海ではローソン、ファミマ、セブンイレブンが中国系コンビニそっちのけで三つ巴の様相を呈しています(店舗数はまだまだ中国系のほうが多いですが)。で、そうなると店内の商品ラインナップやサービスも各社充実されてくるんですね。最近ではローソンが経営主体を日本に移行したことから、これまでのローカル臭がきつい店舗があっという間に清潔で快適な店内に蘇りました。となると、それに対抗するかのようにファミマやセブンも日々オペレーションレベルがアップしている気がしたりして。すごいですよね、資本主義っていいなと思わせてくれます。

 

で、その後にようやく、百貨店やスーパー業態も徐々に変わってきているかなという感じがします。もちろん外資系の百貨店はそれなりのサービスレベルを維持していましたが、売上シェアや店舗数をみてもまだまだ中国で幅を利かせてるのはローカル店舗、というか「国有系企業」です。国営の企業ですね。彼らのこれまでのイメージはと言うと、サービスが悪い、賞味期限切れのものを平気で売ってる、店員が偉そう、店内がなんか暗い、業者として関わっても賃料は高い、支払いも遅い、段取りが悪い、袖の下も払う、その割にあんまり売れない、デモ起きると撤去される。などなど。。書きたいことが止まりません。

 

そんな国有系の小売店でしたが、最近、上海でも外資系の高級店舗がどんどん上陸してくる中で、徐々に「あれあれ?これはやばいぞ」という危機感を現場のマネージャー層は感じているような気がします。要は、明らかに客が他店に流れている、売上が伸び悩んでいるんですね。その顕著な事象をみるにつけ、あれほど居丈高だった店舗側の対応も変わってきているかなと感じるのです。少しづつこっち(出入り業者)の意見を耳にしてくれ、受け入れてくれつつあります。これはある意味チャンスとも言えますよね、これまで敷居が高かったわけですから。

 

という状況のなか、当社も民間、国有系、外資系の販売先を広げつつ、中国人によりリーチできる売り場を確保し提案をしていかなくちゃいけないなと思っています。震災、貿易規制、尖閣デモとトラブルに事欠かない日中ビジネスですが、いい商品は引き続き中国に紹介しつづけていきたいと思う次第です。

 

f:id:kane201:20121010205243j:plain イベントとか

 

ま、決してヤオハンの話ではありませんけどね。写真は全部ヤオハンですけど。

 

という勢いだけのエントリーを空港で書き殴ってしまいました。

いまから日本出張に行ってきます。

 

デモで揺れた中国のその後

 

こちら反日デモから2週間が経った中国上海です。

現地の様子をお伝えします。

 

上海はというと、「あの騒動は何処に?」ってくらい元通りの日常に戻っている。

街には日本商品も通常通り並び、日本飲食店もコンビニも通常通り営業している。よくみれば「ウチは台湾企業の経営です」みたいな張り紙がまだ貼られたりはしているが、特に気にする人もいないようだ。といっても、上海在住の日本人は、まだ外で日本語を喋ることを極力控えるようにし、スーツ姿は目立つので私服っぽい着こなしになり、深夜のKTV(カラオケキャバクラ)も我慢(?)しているというような話を耳にする。そんな日本人の警戒をよそに、街の様子は、すでに中秋節・国慶節の大型連休を控えてみなバタバタと自分のことで精一杯という空気が流れている。

 

上海は常にせわしない。変化も激しいし事件もトラブルも多い。忘れっぽい性格は案外悪いことではないのかもしれない。

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国慶節は建国記念日のこと。今年は中秋節もセットで1週間ちょい休みになる。

 

ビジネス的な近況でいうと、当社の例で言えば最も懸念されていた貿易通関の点は思っていたほど影響は出ていない。日本からの商品は全品検査が入るなどの報道も目にしたが、実際は通常よりやや厳しいかな?程度のものであり、ただでさえ不安定な中国通関手続きを考えれば、十分「普段通り」と思える範囲のものだった。実務的はもう少し続いているので最後まで気は抜けないが・・

 

一方で、案の定影響を大きく受けてしまったな、というのが日本関連のイベント、企画の相次ぐ頓挫。まず日本からの要人が来なくなる。それを受けて現地でのイベントもキャンセルになってしまう。中国側から見送りの通達をもらうことも当然あるが、日本側としても「いま行っても・・・」という思いが強そうだ。日中国交正常化40周年記念イベントなどを筆頭に、現場で長い間準備にとりかかっていた人はさぞ無念だろうなぁと同情する。

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2012日中国民交流友好年 http://jca40.org/about/

 

中国人消費者の購買意欲の面でいうと、「普段通り」と答える店もあれば、「影響あり」と答える店もあるので一概には言いがたい。しかし上海はやはり中国で最も成熟している街らしく、政治と経済を分けて、というか政府と個人の生活は完全に分ける思考を持っている人が多いようで、影響も非常に限定的と感じられる。日本企業にとっても、上海という市場メリットをもう一度考えておくべき点だと思う。

 

今回の件で、中国に住む日本人は、それぞれが日中関係を“我が事”として真剣に考え直すきっかけとなった。「いやぁ、とりあえず家族は日本に一時帰国させましたよ」という日本人駐在員や、「やっぱり中国とは分かり合えないんだ・・」と10数年の在中国経験を経て悟ってしまった人、「今こそチャンス!」とさらにビジネスで意気込む人、「どうせ日本に帰る場所なんてないし!」と開き直ってさらに現地化を突き進む人、本当にいろいろな反応があった。

 

当社は中国資本の会社であり、日本人は自分だけ、あとは全員中国人だ。「戦争になったら会社はどうする?」なんて会話が出てしまうほど、現場的には本当に緊迫した瞬間があった。もちろん会社は続くし、日本の食品をこれからも変わらず中国に売る。来年の春節前にはヤオハンで物産展もやる。しかも日本商品だけで。当然、これからまださらに大小トラブルが発生するだろうが、それを懸念してたじろいでいたら、中国ではなにもできない。「やるったらやるんだぃ!」という、頑固さと無鉄砲さと慎重さをブレンドしたような強い意思で進んでいくしかないのだ。

 

中国では政治指導部の移行が11月で確定し、日本も政治色が強くなってきた。先日の自民党総裁選の後、中国人は「とりあえず石原さんの息子じゃなくてよかったネ」と言ってきたが、こっちの身としてはまさにその心境だ。タカ派でもいいから爪は隠しといてくれと。政治の安定なくして経済は発展しないんだなと改めてわかった。

 

そんなこんなで、明日30日から、中国はしばし平和な休日モードに突入する。連休明けにどうなるか、政治家がまたあらたな火種をもってくるか。それとも妥協に向かうか。願わくば、休みと一緒に中国人の怒気も一緒にぬけてくれればいいなぁと呑気に願っています。

f:id:kane201:20120929171825j:plain なんかもう収まる気がしない

 

以上、上海からお伝えしました。それではよい中秋節・国慶節を。